「大誘拐」天藤真(著)


少々古い作品だが面白さで言えばどんな誘拐ものの推理小説に引けを取らない。

読む前、誘拐された婆さんが誘拐犯三人組をキリキリ舞いにすると聞いて

どんないじわるバアさんが出てくるんだろうと思っていたら違っていた。

刑務所で知り合った三人の男達が大金をせしめて人生一発逆転を狙うため、

目を付けたのが和歌山県の大富豪の柳川とし子刀自、82歳(刀自は敬称)。

最近毎日のように持っている山々の敷地を巡っていることを突き止め

計画通りに誘拐出来たのはいいが、そこからはすっかり刀自のペース…

自分に恩のある刑事が担当になるだろう、

そうしたら和歌山市内にアジトを構えているとふむはず….

とズバリ指摘されて犯人たちはタジタジ。

結局刀自の提案のもと、人里離れた山に住んでいる刀自の元お手伝いさんのところへ。

そして刀自は自分の身代金の額が低すぎると憤慨し

犯人達に「自分の価値をナメてもらっちゃ困る。百億円要求しろ」と迫る。

提示された身代金額をどう集めたらいいのかわからない刀自の子供達に

刀自自身があれをこうやってああやったら算出できると指示する始末。

とにかく刀自を中心に前代未聞のほぼ自作自演誘拐劇が展開するのだ。

どうして刀自が彼らに協力する気になったのか、最後にちょっと意外な動機が….

登場人物全員が根っからの人情派なので誘拐事件に絡めると本当に笑える。

最初っから犯人たちの素性は私達読者には明かされているし、

誰がどうやって誘拐されたのかが徐々にあきらかになるドキドキ感とは違うけれど、

バックヤードを知っている側の視点はそれはそれで楽しいものだ。

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