「カンディード」ヴォルテール (著)

18世紀のフランスの知識人、ヴォルテール。

彼は当時のフランスの哲学や文学においてルソーや戯曲家コルネイユと肩を並べる花形であった。

その彼が主人公の名前に選んだカンディード Candide とは

今ではあまりにも世間を知らなさすぎるがゆえの純粋無垢を意味する言葉になったほどである。

裕福な生まれの主人公・カンディードは「世の中はすべて善で出来ている」と

家庭教師に教え込まれて育った世間知らずのぼんぼん坊ちゃま。

それが領主の娘キュネゴンド(当時としてもいささか古めかしい名前….)との接吻を咎められ、

一人外の世界へ放り出されたのだから大変なことにばかり巻き込まれる。

騙されて軍隊に組み込まれてしまうわ、脱走を試みて捕まり鞭打ちの刑になるわで散々な目に。

そして理想とはかけ離れた、人間の世界の恐ろしさと醜さを戦場で目の当たりにするのだ。

人の悪意に晒され、不幸を重ね、ついにカンディードは楽天主義は間違っていると結論づける。

けれどもそこに達するまでにどれだけの辛酸を舐め、いらぬ苦労を重ねたことか!

最後に師である家庭教師のカンディードに対する

「もし今までの不幸に見舞われなかったら、今の幸福もなかったとは思わんかね?」の言葉は

結局のところは良かれと思ってやったという大義名分のもとに、

カンディードにきちんと世の理を教えなかった責任はどれだけ重かろうと

どんなに自分が間違っていたとしても一切責任は取らない意思表示以外の何であろうか。

世の中には世間の醜い部分を伝えずに教育することが一番いいのだと信じて疑わない保護者も沢山いる。

そしてそれを鵜呑みにして育つ若者もどの時代にもある一定数いるということだ。

カンディードは悪くない、とも見れるがはたしてそうだろうか?

信じていればすべて良しとすればどんな過ちでも許されるのだろうか?

昔の古びた小説と思うなかれ。

ここに示された問題定義は現代になっても少しも色褪せない。

これから我が子を世間に出す親御さんにこそ是非読んでもらいたい一冊である。

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