「ヒトラー・マネー」ローレンス・マルキン(著)


戦時中ともなると相手国の偽札を大量にばら撒き、

通貨の価値を暴落させて混乱に陥れるという作戦が

これまでに何百回と繰り返されてきた事をご存知だろうか。

こちらは膨大な時間を費やして、作者のローレンス・マルキンが書き上げた

第二次世界大戦中のドイツが目論んだ

偽ポンド札作戦の全貌を追った渾身のノンフィクションだ。

最初は慣れない名前の登場人物が次々と出てくるので混乱するが

ここはひとつ、諦めて読み進めてほしい。

いつの間にかこの手に汗握る展開に引き込まれていくのでご安心を。

まずは戦時中だからとはわかっていつつも、

これほどまでに色んな人物が各々暗躍し、騙し合い、利害関係を結んでいるところに

緻密なパズルを眺めている気にさせられるだろう。

事の始まりはヒトラーから右腕であったヒムラーからの命令が元と言われているが

驚くことにそういった命令自体が口頭で行われることがほとんどで

実際にはどこまでヒトラーの意思が反映されてのことなのか謎だというのだ。

かくして偽ポンド札作戦は一度はとん挫したものの、

ベルンハルト・クルーガーの指揮のもと「ベルンハルト作戦」の名で再スタートを切った。

このプロジェクトを成功に導くには絶対に情報を漏らさない技術者集団が必要だ。

そしてナチスのSS幹部たちは強制収容所にいるユダヤ人から選ぶことにしたのだった….

選ばれたのはフォトグラファーやグラフィック関係の仕事をしていたユダヤ人達。

最初に選ばれた三十数名のうち、十九人はその日ガス室送りになるはずだった。

一旦は命拾いしたものの、はたして何時まで無事でいられるのか?

強制収容所の中に出来た更に強固な要塞で

完璧な偽札を作り終えたら口封じにガス室送りが確実な囚人達と

それを宥めすかしてより完璧な偽札を作らせたいクルーガーとのチキンレースが続く。

その後の元囚人達の証言が随所に盛り込まれているので

彼らが生き延びた事はわかっていても最後まで緊張感は解けないまま、

戦争はどんどん終焉へと向かっていく。

ナチスの残忍さと強制収容所の悲惨さに慄きつつ

ページを捲る手が止まらない一冊である。

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