「ノラや」 内田百閒(著)
内田百閒とは夏目漱石の弟子の一人で
師匠に金を借りっぱなしでとうとう返しにこなかった人である。
ある日思い立ったら目的もなしに列車に乗ってどっか行ったり、
飛行機を操縦するのが趣味だった。
それではこの人の顔写真をご覧頂きたい。
このモノクロで口をへの字に曲げた、いかにも偏屈そうな老人の顔だ。
これが飼い猫のノラが外へ出かけたっきり戻ってこなくなり、
激しく落ち込む様を包み隠さず書いた作品だ。
いつも居るはずの場所にいないと涙がこぼれる。
愛猫の下手くそな似顔絵を描いたビラを配り、それを見て電話してきた酔っ払いに
「やい、お前んとこの猫なんざ、とっくに三味線にでもなってらぁww」と言われて泣く。
失踪してから経った日にちを数えてむせび泣く。
近所に聞こえるからやめてと奥方に言われるくらいの大号泣。
大丈夫か、爺さん。
ちょっと泣き過ぎなんじゃないのか、爺さん。
ともかくお気の毒なのだが飽きれてしまうほど泣く文豪、内田百閒。
むすっとした顔で猫を抱いている写真を見ても、
まさかここまで落ち込むとは予想だにしない。
とはいえ、世の中の飼い主たちにとっては他人事じゃない。
ペットが愛おしい飼い主は幾多あれども、
ここまでガクッとこられると、もはや失踪した猫よりも爺さんの方が心配だ。
結論から言えば、年配の男性は猫を飼う時は多頭飼いにしろ、くらいしか感想が浮かばない。
けれど割と短い作品なので、読書感想文を書かなきゃいけないけど
あまり長いものは読みなれていない初心者には良いかもしれない。
当時の語り口調なので古くて若い世代には読みづらい面もあるが
それでも所々解る箇所だけ読み進めてもなんとかなるので是非チャレンジしてほしい。
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