「ボヌール・デ・ダム百貨店」 エミール・ゾラ(著)
エミール・ゾラというのは人間の暗い部分ばかりクローズアップして
うちの母曰く、落ち込んでる時に読んだらピストル自殺したくなる作品ばかり書いている。
そんな中で20冊にも及ぶ大作「ルーゴン・マッカール家」シリーズ唯一のハッピーエンドが
シリーズ11作目の「ボヌール・デ・ダム百貨店」になる。
ハッピーエンドに終わるとはいえ、決して明るさ一辺倒の作品ではない。
親を亡くし、弟二人を抱えて田舎のノルマンディー地方から
親戚を頼りにパリへやってきた二十歳のドゥニーズ。
両親を亡くした直後は同情心からパリへ出ておいでとは言ったものの、
経営芳しくない親戚の叔父を頼ることも出来ず、
結果向かい側にそびえ立つ、百貨店「オ・ボヌール・デ・ダム」に売り子として入る。
そこから彼女の苦難の日々が始まる。
陰気な上司に嫌がらせをしてくる同僚、辛い労働条件、過酷な売上げ競争…..
姉の苦労も知らずに呑気な弟は女関係のトラブルで金を無心に来る始末。
これで神経が擦り切れないほうがおかしいだろう。
賢明に働く彼女はしかし、あらぬ疑いを掛けられ解雇されてしまう。
まだ幼い末の弟を抱えた彼女は困窮極める。
一旦百貨店から吐き出されて見たものは
新しい戦略を駆使して挑んでくる百貨店に対してなす術もなく潰れていく小売店の怒りだ。
それでも彼女は未来に向かって開けた百貨店に戻る。
きっかけは百貨店の経営者、オクターヴ・ムーレと偶然再会したこと。
ちょっと押せばどんな売り子だってモノに出来るムーレに
堅実で慎ましいドゥニーズはなびかない。
手に入らないとわかると俄然欲しくなるのが人間の性というもので
ムーレはあの手この手で彼女を昇進させていく….
でもこの物語の一番の主役は百貨店そのものであろう。
従来の売り方とは全く違う方法で消費者の女性たちを惑わせ、酔わせ、虜にしていく。
近所の小売店に対して老兵死すべしと言わんばかりに巨大化する「お買い物天国」は
色とりどりのシルク、サテン地、レース、リボンを溢れさせて財布の紐を弾き飛ばす。
読むと今の日本の労働条件がさして当時のフランスと変わらない気がしてくることに
もっと危機感を持ったほうが良いのかもしれない。
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