「活版印刷三日月堂」 ほしお さなえ(著)
「活版印刷」と聞いてどんなものかピンとくる人ももはや少ないだろう。
もしかしたら「あ!ジョバンニがやってたバイトだ!」と気付く人もいるかもしれない。
そう、活字をひとつひとつ拾い、木枠に並べてセットし
手刷りで行う昔の印刷スタイルのことを言う。
ほしさなえの「活版印刷三日月堂」は、小江戸の街・川越が舞台の話。
そこに開業した活版印刷の店。
どうやら昔ここに住んでいた老夫婦の孫娘が引き継いだらしい。
依頼人はぽつぽつと増え始める。
夫亡き後、女手一つで育ててきた一人息子を遠い大学へ送り出す母。
受け継いだ喫茶店で自分の個性を出していきたいと悩むマスター。
まさに「銀河鉄道の夜」をテーマに文化祭に取り組みたい文芸部の女子高生たち。
祖母が戦火の中を守り抜いた活字を使って招待状を作りたい花嫁。
依頼に対して真摯に向かう三日月堂の店主、弓子さんは
一人一人の願いを静かに聞き、形にしてくれる。
決して派手な内容でもないしガツンとくるテーマ性があるわけではないけれど
かと言って読者をほっこりさせるためだけに書かれた印象の薄い本でもない。
読書初心者に最適なストーリーだと思うし、
ちょっと重苦しい内容ばかり読んで疲れてきた人にもお薦めする。
旅のお供にも丁度良いかもしれない。
もしこの一冊が気に入ったのなら、ぜひ三浦しをんの「ふむふむ おしえて、お仕事!」に
活版印刷のことが詳しくインタビュー形式で載っているので読んでみてほしい。
これを機にアニメ版「銀河鉄道の夜」を観るも良し、
原作を読み返すのもまた一興だ。
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