「ル・オルラ」モーパッサン(著)
昨日モテる作家は短編が上手いと言った手前、ここで紹介しないわけにはいくまい。
今日の作家はフランス文学の「自然派」の中でも
群を抜けて短編が得意だった伊達男、モーパッサンの作品だ。
モーパッサンと言えば「脂肪の塊」や「女の一生」の方が有名だけど、
「ル・オルラ」も負けず劣らずの珠玉の一作だ。
まるで作家自身が主人公のような、日記の形をとっている。
最初の頃はすこぶる元気で地元ノルマンディーの生活を満喫しているが
やがて謎の体調不良を訴える記述が増えてくる。
見えない何かに怯える子供のように川のほとりを見に「行かざるを得なくなって」
その次の瞬間、苺を「食べずにはいられなくなる」….
自分の行動が制御出来なくなることに恐怖を覚え医者に行くも、治療の結果は芳しくない。
そんな状況を振り切るようにパリに行ってみたり、モン・サン・ミッシェルに行ってみたりするが、
行く先々で今まで自分が信じていたことが揺らぐような出来事に苛まれていく。
そして自分が寝ている間、部屋のコップの水が無くなっている気がしてくる。
ついには何者かが毎夜自分の上に覆いかぶさり、生気を吸い取っている!と思い始め、
寝ている間に何が起きているのか苺や牛乳や水差しを置いて実験するのだ。
翌朝の変化に恐れおののき、見えない者の正体を探ろうとするが….
タイトルの「ル・オルラ」の意味は最後にわかるのだけれど
それを発見する時の主人公の行動が上手く書けているのも
同じ最後を辿ったモーパッサン本人だからだと思わずにはいられない。
普通の人だったはずなのに、だんだん狂気に蝕まれていく。
けれど読む側は本当に狂気なのか、本当は実際に何かあるんじゃないのかとハラハラしてしまう。
読み応えは抜群だし、短い短編なので
モーパッサンを始めて読む方にはこちらをお薦めする。
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