ガソリン生活 伊坂幸太郎【著】
伊坂幸太郎の小説は大体あまり強くない善人がかなり凶悪な悪人に立ち向かう話だ。
ワンパターンだと思うが今回は少し違った視点で書かれていて
ちょっと目新しい伊坂らしさが出ているので紹介したい。
この物語の中では車には意思があり、他の車達とすれ違いざまに会話し
乗っている人間達の話も理解出来るという設定だ。
望月家の自家用車、緑色のデミオは母・郁子とちょっと抜けてる長男・良夫、
気難しい年頃の高校生の長女・まどかと子供らしくない聡明な次男・亨と暮らしている。
免許取り立ての良夫の運転で亨の買い物に付き合った帰りに
いきなり女性が乗せてくれと頼んできた。
突然の出来事に戸惑いながらも乗せた女性のほうを伺うと
ワイドショーで不倫発覚が取り沙汰されている元女優の荒木翠だった。
翌日、良夫達はパパラッチを振り切ろうとした荒木翠の車が
トンネル内で事故に遭い、荒木翠とその不倫相手が死亡した事をニュースで知る。
事故の数時間前に荒木翠を乗せたという情報を聞きつけて
新聞記者が近づいてきたが、どうも色々とおかしいと踏んだ望月兄弟(とデミオ)は
自分達で真相を確かめようとするものの、あらぬ方向から雲行きが怪しくなっていく….
こちらは全てデミオの視点で書かれているので
持ち主が乗っている時に車内で会話した内容しかわからないし、
運転手の意のままに走るしかないもどかしさを感じるデミオもまた、調査に興味深々である。
お隣さんの車、ザッパと喋りながら望月家の心配をして
他の車とすれ違えば情報交換したりする様がとても面白いしミステリーとしても良く出来ている。
伊坂作品が初めての人にうってつけの一冊だと思う。
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