フランスの小説で子供向けのものはあまり日本には紹介されていない気がするが
本作は20世紀の作家、マルセル・エーメ(エイメとも書く)の作品なので
モーパッサンやエミール・ゾラよりも後のはずだが
作中に漂う雰囲気は19世紀の田舎っぽさで、おおよそ近代的な匂いは感じさせない。
フランスの田舎の農家の娘達、デルフィーヌとマリネットは
言葉が喋れる家畜たちと何故か意地悪な両親と暮らしている。
タイトルにもなっている「猫が耳のうしろをなでるとき」は
二人がいつも頼りにしているのが聡明な猫、アルフォンスが
日照りを心配した親達のために耳の後ろを毛繕いして雨を降らせたは良いが
毎日毎日耳の後ろを洗っては雨を降らせる飼い猫に両親は次第に不満を募らせて….
袋詰めにして捨てようとするのである。
そこからどうなったかは読んで頂くとして、
この両親というのがどうにも娘達や動物たちに対して底意地が悪い。
昔はそんな家が多かったのかもしれないが、そこから透けて見えるものは
決して安らかでも安泰でもない、親の意のままに従うしかない子供の立場だ。
作者のマルセル・エーメは喋る家畜達とさして変わらない身分なのだということを
ある日の朝、起きてみたらば突然牛とロバに変身していた女の子達のエピソードで指摘している。
親たちはまず信じられず、嘆き、盛大に不憫に思って憐れむが
次第に牛とロバが娘達だったことを忘れ、普通の家畜同然に働かせ始めるのだ。
一見デルフィーヌとマリネット姉妹とその仲間たちの愉快な物語、では終わらないところが
ちょっとブラックな現代童話と言えるだろうか。
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